【本研究成果のポイント】
広島大学大学院人間社会科学研究科上廣応用倫理学講座の片岡雅知 寄附講座准教授、ならびに同研究科の澤井努 特定教授(寄附座教授兼務、シンガポール国立大学客員教授)は、東京科学大学工学院の小池真由助教とともに、ヒト脳オルガノイド研究への細胞提供に対する日本人の意識を調査するため、オンラインでアンケート調査を実施しました。日本人326件の回答のうち、提供細胞を幅広い医学・科学研究に利用することを可能にする包括同意に対して否定的・慎重な態度を示すものが73%を占めることが明らかになりました。
本研究成果は、2025年8月22日に学術誌「Frontiers in Genetics」でオンライン公開されました。
| 「意思なし」の選択理由 | 割合(n=74)(複数選択可) | 「場合による」の選択理由 | 割合(n=64)(複数選択可) |
| 情報提供が必要 | 53% | 情報提供が必要 | 30% |
| 使用方法が不明で不安 | 34% | 信頼が必要 | 20% |
| 用途の決定権がない | 30% | 特定の目的のみ可 | 16% |
| 悪用への懸念 | 22% | 利益提供が必要 | 14% |
| 不信感 | 11% | 悪用への懸念 | 13% |
| 研究で生じるリスク | 6% | 研究で生じるリスク | 11% |
| その他 | 13% | その他 | 8% |
表1:包括同意採用機関に細胞提供の「意思なし」「場合による」を選択した理由(自由記述)
本調査にご協力いただいた参加者のみなさまに感謝いたします。
また、本研究は以下の支援により実施しました。
・本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事 基盤研究(B) 「現代社会におけるヒト発生研究の倫理基盤の構築」[24K00039] (代表者:澤井努)
・日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事 学術変革領域研究(B) 「ヒト培養技術を用いた「個人複製」の倫理学」[24H00813] (代表者:澤井努)
・日本医療研究開発機構(AMED) 脳とこころの研究推進プログラム(精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト) 「ヒト脳オルガノイド研究に伴う倫理的・法的・社会的課題に関する研究」[JP23wm0425021/JP24wm0425021] (代表者:澤井努)
・日本学術振興会 (JSPS)・文部科学省 科学研究費基金 若手研究(21K12908)
・科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX) [JPMJRS22J4]
・公益財団法人上廣倫理財団 [UEHIRO2023-0122].
*1:多能性幹細胞
自己増殖能(無限に増殖する能力)と多分化能(体を構成する全ての細胞に分化できる能力)を持つ 細胞。ES細胞(精子と卵子の受精後5〜7 日が経過した胚盤胞から内部細胞塊を取り出して人工 的に作られる)やiPS細胞(皮膚や血液の細胞に複数の遺伝子を導入して人工的に作られる)がある。
*2:ヒト脳オルガノイド
ヒトの多能性幹細胞を培養して作製される立体的な脳組織。
*3:サイエンスコミュニケーション
科学者や専門家が科学の知識を人々(非専門家)にわかりやすく伝えたり、科学技術をめぐる課題を人々に伝えたりすることで、専門家と非専門家による双方向の対話を生み出す活動のこと。